東成イービー東北

Technical Introduction
技術紹介

2020年1月20日 レーザクリーニング装置「イレーザー」110W機NEWリリース!

110W新登場.jpg

レーザクリーニングとは

レーザ洗浄原理イメージ

レーザクリーニングは、レーザ光を除去対象物に照射することによって、物質の蒸発及び衝撃圧力を利用して、除去対象物を母材表面から剥離する、今までに無い新しい洗浄方法になります。
短パルスレーザを除去したい対象物に照射することで、エネルギーの吸収により蒸発させ、同時に照射表面に急激にプラズマが生成され、その衝撃波及び熱膨張圧で除去対象物が母材から剥離されます。図1は、レーザ洗浄原理のイメージになります。

しかし、要求される洗浄品質によりますが、レーザ強度によっては母材を損傷させてしまうこともあるため、母材に一切影響させることなく、表面の汚れのみを除去するためには、適正なレーザ照射条件の選定が必要になります。(※1)

※1:レーザ照射条件の選定は、当社でサポートさせて頂きますので、専門知識を必要とせず、誰でも簡単に装置を扱うことが可能です。
使用にあたっては、除去対象物を剥離するため飛散物(ヒューム)が発生致します。その飛散物を吸引するバキューム装置(集塵機)を併用しながら使用することで作業環境の汚染を防止します。

レーザクリーニング加工原理

図2:レーザ照射強度による除去イメージ

レーザクリーニングは、除去対象物と母材表面のレーザ照射強度による加工閾値の差を利用して加工が行われます。除去対象物のみがレーザ照射に反応し、母材表面はレーザ照射に反応しない条件でレーザを照射することでいわゆるダメージレス加工が可能になります。図2は、レーザ照射強度による除去イメージになります。

例えば、除去対象物が錆で母材が鉄系の場合、図2の条件①では加工閾値が両方を上回るため、母材にダメージが入ってしまうレーザ照射条件となってしまいます。条件②は、除去対象物を上回り、母材を下回る加工閾値のレーザ照射条件であるため、母材にダメージを与えることなく、除去対象物が除去可能となる条件になります。鉄鋼材の表面にある赤錆を想定した場合、レーザ加工閾値は、
鉄の加工閾値(80)>錆の加工閾値(10)
となっているため、錆のみ反応する条件②でレーザ照射することで、母材にダメージを与えることなく綺麗に加工を行うことができます。

注意!:除去対象物が母材を上回る加工閾値のものは、除去不可能となります。

また、弊社で販売している「イレーザーR」の特徴として、洗浄の効率性を考えレーザ照射幅をコントロールする機構を設けております。ガルバノスキャナーと呼ばれる反射ミラーを用いて、左右にレーザを振ることで線での照射を可能にしています。

レーザクリーニング装置の使用概要

写真1:レーザクリーニング装置の使用状況

レーザクリーニング装置の使用方法は、作業者がヘッド部を手で持ち、レーザ焦点距離を調整しながら除去対象箇所に合わせてレーザ洗浄を行う方法が基本的な使い方になります。レーザ焦点距離の合わせ方は、レーザが除去対象物に照射した時に生じるプラズマの立ち具合や発生する音で感覚的にベストな焦点距離が分かります。(ジャストフォーカス時に一番プラズマが激しくなり、それに伴い音も激しくなります)そのため、操作は非常に簡単です!また、ハンディ操作であるため、曲面部や凹凸部の形状に合わせて操作することが可能です。(写真1参照)

レーザクリーニング装置の概要

稼動に必要なユーティリティは家庭用100V電源のみです!キャスターによる移動が簡単に行えます。装置のラインナップはレーザ出力70W機と38W機の二機種で、70W機の方が38W機に比べて1.5倍以上速く除去が可能です。また、ランニングコストは電気代のみです。
使用例:70W機を最大出力で1時間連続発振させた場合の電気代は約10円。

レーザクリーニング装置の取扱い時注意点

本装置のレーザクラスは「CLASS4」と極めて危険なクラスのものを使用しています。ただし、鉄鋼材を切断・溶接するレーザも同じ分類で、産業・工業界では一般的に普及しています。正しい取扱いと運用ルールに従えば安全上問題無く使用して頂けます。第一として、取扱うレーザ光の種類に対応した保護(遮光)メガネを着用する。次に、レーザ光を直接、目や肌などに当てないこと。

一般的な洗浄方法

薬液による洗浄(ウェット洗浄)

様々な洗浄液(溶剤)を使い分けることで脱脂や錆、スケール(酸化物)、樹脂残渣などの除去対象物に対して化学反応を利用して除去するのが特徴。表面の除去対象物だけを選択的に処理することは難しいが、洗浄液の品質と反応時間や温度を管理するのが一般的です。

「洗浄液の種類」
・水系洗浄剤(酸性、中性、アルカリ性)
・非水系洗浄剤(可燃性、不燃性)
・準水系洗浄剤(非可燃物型、可燃物型)

洗浄後は化学反応を止めるためにpHを調整する中和工程や水洗工程などが必要となります。使用によっては、乾燥工程も必要となることが多く、洗浄するために必要なエリアの確保が負担になる傾向があります。また、近年は環境負荷低減のために洗浄能力の高い溶剤の使用が困難になりつつあり、環境にやさしい洗浄能力の低い溶剤で長時間洗浄しなければならなくなってきています。廃液処理も経済的に大きな負担になります。

ブラストによる洗浄

まず、ブラストはメディアと呼ばれる様々な種類の粒子を除去対象物に高速に衝突させることで表面を洗浄する洗浄方法になります。一般的なブラストは数ミリの鉄球を使用しており、軟らかいものでは「くるみ」「重曹」「樹脂ビーズ」「ドライアイス」があり、硬いものは「セラミックス」「炭化ケイ素」が代表的なものになります。除去対象物が硬いものになれば、必然的にそれより硬いメディアを選定せざるを得ません。それによって、被除去物が取り除かれた直後から母材への衝突が始まり、母材への損傷が避けられないというデメリットがあります。また、ブラストはメディアが飛散するため、密閉または養生された範囲内で作業することが必要です。

レーザクリーニングのメリット

レーザクリーニングプロセスは、溶剤や水などを用いないドライ環境でのクリーニングになります。廃棄物の処理を必要とせず、非接触加工であるため、適正なレーザ照射条件を選定すれば、母材を傷つけずにクリーニングを行うことが可能です。化学洗浄、ブラスト洗浄では、非施工部の保護のため、マスキング工程(前処理工程)が必要となる場合がありますが、レーザクリーニングは非施工部に影響なく洗浄が行えます。
ブラスト洗浄で金型を洗浄する場合、「冷却⇒金型取外し⇒ブラスト洗浄⇒金型取付け⇒昇温」と工数が膨大に掛かりますが、レーザクリーニングでは、それらの工程を省くことが可能で、大幅な生産性向上が見込めます。ブラスト洗浄では、消耗品のランニングコストが掛かりますが、レーザクリーニングで掛かるコストは、電気代のみでコストダウンも見込めます。

レーザクリーニングのデメリット

レーザクリーニングも万能ではなく、苦手な分野も存在します。光の照射によって洗浄を行っているという特性上、光を透過する除去対象物、または反射率の高い除去対象物の場合、除去が困難となります。(※2)さらに、洗浄対象が内部構造(複雑な形状)を持っている場合、光の当たらない箇所は洗浄不可能になります。また、レーザ加工閾値の差で精密な洗浄を可能としているため、その差が少ない場合や母材の方が低い場合は洗浄不可能となります。

洗浄できない事例:樹脂容器上の樹脂系プリント、ゴム上の金属等

※2光を透過する除去対象物であっても、PTFEコーティングの様に、除去対象物と母材との界面でレーザ光が反応するものは、剥がれるように除去できる場合もあります。

表1:従来洗浄方法とレーザクリーニングのメリット、デメリット比較表

洗浄方法メリットデメリット
薬液超音波洗浄 ・汚れが隅々まで落ちる
・低コスト
・廃液処理が必要
・洗浄溶剤が劇薬
・表面を傷つける
・洗浄物を取外す必要がある
・洗浄工程が多い
サンドブラスト ・扱いやすい ・表面を傷つける
・ランニングコストが掛かる
・粉塵が発生する
ドライアイスブラスト ・製造現場での洗浄が可能 ・騒音が発生する
・ランニングコストが掛かる
・金型を冷やすため、昇温時間が掛かる
レーザクリーニング ・水、薬液、ブラスト材を使用しない
・ドライプロセスである
・母材にダメージを与えない
・非接触である
・表面層の一部を除去できる
・低ランニングコスト
・製造現場で洗浄が可能
・環境にやさしい
・初期コストが他の洗浄装置より高い
・レーザ光が当たらない箇所は洗浄できない
洗浄方法
薬液超音波洗浄
メリット
・汚れが隅々まで落ちる
・低コスト
デメリット
・廃液処理が必要
・洗浄溶剤が劇薬
・表面を傷つける
・洗浄物を取外す必要がある
・洗浄工程が多い
洗浄方法
サンドブラスト
メリット
・扱いやすい
デメリット
・表面を傷つける
・ランニングコストが掛かる
・粉塵が発生する
洗浄方法
ドライアイスブラスト
メリット
・製造現場での洗浄が可能
デメリット
・騒音が発生する
・ランニングコストが掛かる
・金型を冷やすため、昇温時間が掛かる
洗浄方法
レーザクリーニング
メリット
・水、薬液、ブラスト材を使用しない
・ドライプロセスである
・母材にダメージを与えない
・非接触である
・無騒音である
・表面層の一部を除去できる
・低ランニングコスト
・汚れが早く落ちる
・製造現場で洗浄が可能
・環境にやさしい
デメリット
・初期コストが他の洗浄装置より高い
・レーザ光が当たらない箇所は洗浄できない

従来洗浄方法とレーザクリーニングの洗浄作業時間の比較

図3:従来洗浄方法とレーザクリーニングの洗浄作業時間の比較図

導入事例
・金型洗浄(ダイカスト・樹脂・ゴム等)
・エンジンリビルド業界(産業用機械・輸送機械)
・コーティング剥離(PTFE・DLC等)
・プラントメンテナンス
・塗装冶具・蒸着冶具の洗浄 等々

レーザクリーニング装置「イレーザー」販売機種のご紹介

製品仕様
型 番 TEFⅡ-70 TEFⅡ-38
(70W発振器model) (38W発振器model)
レーザレーザ最大出力 70W 38W
波 長 1060-1080nm
パルス周波数範囲 1-500kHz
クラス分類 クラス4
走査系最大レーザスキャン幅 66/108/172mm ※1・※2
レーザスキャン周波数範囲 1-500Hz ※2
寸 法制御部本体(突起部含む) D600×W360×H880mm(D650×W410×H960mm)
レーザ照射ヘッド D330×W100×H150mm
標準伝送ファイバ長 4,750mm
重 量装置全重量 70kg 68kg
レーザ照射ヘッド 2.5kg
最大消費電力 530W 370W
その他共通仕様 ●供給電源AC100V 50/60Hz
●空冷(チラー等の外部冷却器は不要)
●レーザ照射スイッチは、ヘッド上部ボタンとグリップ内側の二重安全機構

※1 レーザ照射ヘッドに取り付けるfθレンズによって異なります。また、発振器特性に起因する若干の個体差があります。
※2 レーザスキャン速度による上限値があります。スキャン幅と周波数の組み合わせ次第では、理論的なスキャン速度が得られない場合があります。
※3 製品の仕様は、改良のため予告なく変更する場合があります。

弊社ではイレーザーの洗浄テストを無償にて受け付けております。お気軽にお問合せ下さい!
洗浄テストをご希望される場合は、まずお問合せ頂いた後、テストを実施する洗浄物を送付あるいはお持込み頂きテストを実施する流れになります。
必要であれば、お立会い頂きながらのテスト実施も可能です。
弊社が訪問して洗浄テストを実施することも可能です。こちらについては別途ご相談下さい。

お問合わせ先:東成イービー東北㈱ TEL:024(963)2411 FAX:024(963)0455